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めんどうがりこけしのぶろぐ

映画「Okja」感想(ネタバレ)

Netflixで配信しているポンジュノ監督の映画「Okja」をみました。2017年に公開なのですでにご覧になっている方も多いと思います。

 

https://www.netflix.com/jp/title/80091936

 

韓国の山村に住むミジャが家族同然の巨大な生物オクジャを巡ってグローバル大企業、動物愛護団体の陰謀、策略、私欲などに巻き込まれていく物語。

 

事前情報なしで見てドキドキハラハラし通しでした。ポンジュノ監督の映画って土臭くてパンチが効いたものが多いと思うんですが、今回は別のグロテスクさがあって心苦しくなる場面が多々ありました。観る価値のある作品ですがそれと同時にみたことを後悔するほど辛くなりました。

 

ここからネタバレしていきます。

 

◾️ネタバレ感想

 

主人公は女の子ミジャと不思議生物のオクジャ。オクジャは豚とカバとサイをたして3で割ったような動物でアメリカの大企業ミランが遺伝子操作でつくった生き物です。

他の人にはわからないけど2人は会話をしていて、耳にそっと呟いたり、そっとしゃべったりジェスチャーや鳴き声以外でも意思疎通してます。オクジャは賢く巨大な身体をつかって狩りをしたり、ミジャが近道だからという危険な道をいきたがらなかったり、ミジャのピンチを自分が怪我することを厭わずたすけます。ハラボジが「わたしとお前の2人家族」と言いますが「3人だよ。オクジャも入れて3人家族」と訂正するくらい彼女にとってオクジャは当たり前に家族です。仲良しの親友で家族で特別な存在なんだとわかります。オクジャは山になってる柿が好物。ちょっとトトロを思わせる描写がありました。

 

最後まで見てから思ったんですがハラボジは孫の先行きが心配で、自分の死んだあと1人になってしまうミジャのことを考えてコンテストに参加したのかもしれません。山村にはほかに人が住んでないですし、お金のこと(ぼろぼろのテレビも買いかえないで貯めてる)花嫁の持参品になる金の豚の置物、お前も大人なんだから誰かいい人を探しなさいといいます(ハラボジは年齢的にそういう事をいう昔の人)。ハラボジははじめからオクジャが10年後にうまく育てばいなくなることコンテストのことを知っているので、何も知らないミジャとの温度差があり、2人の特別な関係を知っているけど、だからこそいつか来る別れを言い出せなかったのかもしれません。ミランド社がオクジャを連れ去るときに「お墓詣りにいこう」と言ってミジャを森の奥までつれていきますし(そこで純金の豚も渡す)、空港では渡せなかったけど酔い止め?に漢方(たぶん高麗人参の根っこ)を渡そうとしたりと甲斐甲斐しいといいますか、彼なりに孫を大事に思っているのがわかります。

 

ミジャの行動力が凄かった。オクジャを追いかけて山村から夜遅いのに1人でソウルまで行っちゃう。ミランド支社にまで行って乗りこんじゃう。オクジャを見つけちゃう。地下の売り場を走り回って大立ち回り。大人にも物怖じしないで自分の目的を言うし、すごくしっかりしています。はじめは英語を話せなくて動物愛護団体の人間とのやりとりがうまくいかなかったり、ミランド本社の人間にもいいようにされてしまうけど独学で必要最低限の英語を短期間でぶちこんで、最後はきれもののミランド社長のナンシーも驚きの言動をします。

 

ここからとてもグロテスクです。

 

ミジャは傷つきながらも最後はオクジャを助けました。オクジャはミランド社に連れていかれて以来肉体的にも精神的にも辛い思いをしていて、それって一生消えないですよね。力づくで連行されたり、電気で攻撃されたり、無理矢理交尾させられたり、肉体の一部を味見と称して採取されたり、その後もいろいろあったんだろうとおもいます。オクジャは外見は動物そのものなんですが、はじめからさいごまで丁寧にミジャとの関係性が描かれているので、まるで自分の大切な誰かが危険に晒されているように感じます。(ミジャとオクジャに感情移入しまくってみてました)

 

結果的に山村に住む4人にとってはハッピーエンドでしたが本当に精神的にどん底になる胸がいたい物語でした。ど田舎に住んでいますが、農作物が主で畜産をやっているところがありません。養豚場、養鶏場もいったことがなくて、なんとか牧場のようなテーマパーク的な所にいったことがある程度です。映画では架空の動物であるスーパーピッグが対象ですが、あそこで行われていることは現実の動物に行われていることに近いんですよね。わたしは食べているわけで、残酷なことをしているのは事実で、大量生産するために色々なことがなされているわけで、それで暮らしている人もいるわけで……。電気柵やその中でうごめいてる沢山の殺処分(食用に加工される)されてしまうスーパーピッグたちはCGだけど現実だし、強制収容所のようにも見えるし、ミジャもオクジャは助けられたけど他のスーパーピッグたちは助けられなくて(そういう所は徹底してリアル)ものすごく複雑な表情でした。その中で2人のスーパーピッグがこっそり子供をオクジャに預けます。この子供が元気いっぱいやんちゃで楽しそうに山村を駆け回っているので、そこだけは救いでした。そしてオクジャが最後に口を動かしてなにかミジャに伝えていて、ミジャが嬉しそうな顔をしていました。なんて言ったかは2人のみぞしる、です。4人の幸せを祈ります。

 

スノーピアサーは列車っていう閉鎖的な空間で起きる話だけど住んでる人たちは世界各国の人々でスケールが大きく主人公はいるのにそこに監督の思いが乗ってる感じが薄くてしっくりこなかったんですが、今回は地に足がついた作品だなって思いました。韓国人のど田舎の子が外国の大都会ニューヨークに家族のために行くっていうのが監督のリアルで良かったのかな。

 

ティーブン・ユァンが出てると知らなかったのでびっくり。彼が韓国語をしゃべっているところをはじめて見ました。「英語の勉強しとけよ」って字幕になってたけど、「俺の名前は○○って言うんだ」っていってたんです。ミジャは誰かに言われて英語を勉強したんじゃなくて自分で必要だと思ったから覚えたんですよ。ここで「勉強しとけ」って促されるのと自主的にミジャが勉強したって事はずいぶん違ってくるけどどうなんでしょうか。字幕って難しいんだな。見返す勇気がなく確認してません。確認できたら追記します。

 

長いのに読んでくださってありがとうございました。パラサイト楽しみです。